インボイスは事業者の方が消費税を納めるための制度ですが、インボイスを取得するかどうか迷ってる者が多いです。
しばらくの間は、このまま様子見をしても良いと思います。
インボイスは急がなくても大丈夫です
インボイス(適格請求書)とは、事業者が税務署にインボイスの登録の申請をしてインボイスの番号を取得し、その番号が記載された請求書を言います。
取引の相手方は、その請求書を見てインボイスの番号が記載されてることで、この業者は税務署にインボイスの取得を届け出ていると確認できます。
登録した事業者は、インボイスの番号、商品価格、税率、税額を記載した請求書(適格請求書)を売上先に請求することで、事業者間の取引の消費税をお互いに正しく把握できます。
このインボイス制度によって影響を大きく受けるのがフリーランスなどの個人事業主で売上高が年間1,000万円以下の事業者です。
消費税は、商品の価格に10%の消費税を上乗せし、税込みの価格で取引します。
国に消費税を納めるのは、売上先から消費税込みの売上代金として受け取った金額から消費税相当分10%を納めます。
その時に仕入れ金額があれば仕入にかかった消費税を差し引いて差額を納めます。この仕入相当分を「仕入税額控除」と言います。
売上本体価格900万円、消費税90万円、合計990万円の商品を
仕入本体価格700万円、消費税70万円、合計770万円で仕入れた場合。
消費税は、売上消費税90万円-仕入消費税70万円=20万円となります。
この20万円の消費税を税務署に納めなければなりません。
会社の利益は、売上本体価格900万円-仕入本体価格700万円=200万円です。
売上が1,000万円以下の事業者は、この納める消費税20万円を、今まで免税事業者として納めていなかったため、「益税」と言われ、懐に入れていたとして指摘されてました。
消費税をもらってない事業者の税金
通常の場合の消費税は、上記、記載の通り、20万円の消費税を納めることとなります。
ところで、下請け業者は、大手の売上先業者に対して価格の面で泣かされることが多いです。
下請け業者のうち、「売上1,000万円以下で免税事業者だから消費税はもらってません」と、売上先に話す業者の場合は、
売上代金を990万円でなくて、900万円で売上を行っており、消費税は含まれてませんので「益税」にはなりません、と言いますが、実は法律上消費税が含まれてることとなってます。
下請け業者がインボイスを取得して、900万円での売上の場合は、売上の本体価格818万円、消費税82万円、合計900万円になります。
仕入の本体価格700万円、消費税70万円、合計770万円の商品を仕入れてる場合、
消費税額は売上消費税82万円-仕入消費税70万円=12万円の消費税を納めることとなります。
事業者の利益は、売上の本体価格818万円-仕入の本体価格700万円=118万円となります。
当初の売上利益200万円-インボイス取得後利益118万円=82万円、となり、消費税を納めることで82万円の利益が減少します。
そのため、下請け業者は、大手の売上業者に対して、今まで免税事業者で消費税をもらってませんでしたので、
インボイスを取得することで消費税を納めることとなり、利益が圧迫されるため売上価格900万円を消費税込み990万円に値上げ交渉を行います。
ところが、売上先の業者は、仕入価格の値上げは困るので、消費税分を値上げするなら取引先を変えますと言います。
そのため、下請け業者は、今までの売上価格900万円を維持するために、免税事業者のままでいます。
そうなると売上先は、下請け業者がインボイスを取得してないと、「仕入税額控除」ができませんので、900万円の仕入価格に対する、消費税消費税相当額82万円を仕入価格から引き下げるように言います。
下請け業者がインボイスを取得しない場合、売上先は、900万円で仕入れた商品を、82万円の「仕入税額控除」を適用できません。
しかし818万円で値引いて仕入れるため、売上先は、現金の出金では損得はありません。
そのため政府は、このような下請けいじめは、許されない。と言ってます。
実際、日本たばこ産業は、下請けの農家に対して、「消費税相当額を買い取り価格から引き下げる」と一方的に通告しました。
そのため、公正取引委員会は独禁法に違反する恐れがあるとして、日本たばこ産業に注意しました。
公取委は25日、7月末までにJTを含め18事業者で独禁法に違反する恐れがある行為が確認され、注意したと発表していた。
引用元 日本経済新聞 2023年8月28日
まとめ
もともと、財務省は460万人いる免税事業者のうち、新たに課税事業者になり得るのは160万人と推計してます。7月末時点で92万人(20%)の事業者が申請してます。
7月末で、免税事業者でインボイス登録者は、約20%。民間の調査では、登録する予定はない事業者は約25%あるようです。
さらに、「インボイス制度に向けて何もしていない、何をしたら良いか分からない」が約40%あるようです。
インボイス登録には経過措置がありますので、当面その経過措置を利用するのも、良いかと思います。
【インボイス取得の場合】
経過措置(3年間)を利用した簡易な計算
売上金額の10%の消費税に対して20%の納付額で計算の手間が省けます。3年間できます。
年間売上990万円の場合の事業者の場合
消費税を含んだ売上金額990万円×10%=売上消費税99万円
99万円×20%=198千円が、納付額となります。
ただし、仕入金額が高くて利益が少ない場合は損します。
仕入本体価格800万円、仕入消費税80万円、合計仕入金額880万円の場合は、売上消費税90万円-仕入消費税80万円=10万円ですみます。198千円-100千円=98千円、消費税が高くなります。
【インボイス取得しない場合】
飲食業などの売上先が一般消費者の個人の場合は、お客様はインボイスは関係ありませんので、わざわざインボイスを取得する必要はありません。
ただし、お客さんがサラリーマンで飲食代金を、会社の経費に落とす場合は、インボイスが無いと会社側では「仕入税額控除」できません。
サラリーマンの多いお客さんのある飲食店はどうするか悩むところです。
また、売上先が年間売上500万円以下の事業者であれば、売上先事業者は、簡易課税事業者の場合が多いので「仕入税額控除」は必要有りませんので、インボイスを取得する必要はありません。
1,000万円以下の免税事業者が、インボイスを取得しない場合でも、売上先では経過措置として2029年9月末」まで、
消費税を一定額差し弾ける経過措置として、80%の仕入税額控除(3年間)、50%の仕入税額控除(3年間)認められます。
今すぐ急いで決めなくても、インボイスを取得するか否かは売上先と話し合って決めた方が良いと思います。
ただし、長い目で見たら経過措置も6年でなくなります。インボイス制度が廃止にならなければ、今からインボイスに登録しても良いと思います。
北海道産ホタテです
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